------  傑作映画館  ------


  ヒーロー/靴をなくした天使(原題:HERO )
   監 督 :スティーブン・フリアーズ
   出 演 :ダスティン・ホフマン、アンディ・ガルシア、ジーナ・ディビス、
   ジャンル:ドラマ
   1992  アメリカ





注)以下、ネタバレだらけです!

【あらすじ】
 バーニー(ダスティン・ホフマン)は、所謂小悪党です。
 真面目に働かずインチキ商品やカードの売買をしていて、今も裁判待ちの状態なのに全く反省の色はなく、ただ弁護士から別れた妻との間にできた息子に会いに行くように言われます。(裁判での点数稼ぎのため)
 仕方なく息子に会いにポンコツ車で出掛けた晩、豪雨になりやっと走っていたバーニーの車の直前に、なんと旅客機が落ちてくるのです。
 生存者に「助けてくれ!」と言われたバーニーは成り行き上仕方なく乗客の救出を始め、全員の脱出を助けますがその時悪い癖で乗客の女性を助けるついでにそのハンドバッグを失敬してしまいます。
 泥だらけで片方の靴を失くした彼は、元妻の家まではいきますが遅刻のせいで息子には合わせてもらえません。
 帰りにポンコツ車がいよいよ動かなくなってヒッチした車の運転手はホームレスで車上生活者でしたが、バーニーは彼=ジョン・ババ(アンディ・ガルシア)に先程の飛行機事故の話をし、事故現場で片方だけになった靴をくれてやるのでした。

 彼が助けてハンドバッグを盗んだ女性は売れっ子のレポーター・ゲイリー(ジーナ・デイビス)で、テレビ番組を通じて命の恩人のヒーロー探しを始めるのですが誰もヒーローの顔を見ていないし、テレビ局がそれに乗って100万ドルの賞金をかけるのです。
 バーニーが、ババが恩人として証拠の靴を持って名乗り出たのを知ったのは刑務所の中でした。
 しかし大衆に熱狂的にヒーローとして受け入れられたババは、数々の善行を重ねながらもそのプレッシャーと嘘をついている罪悪感に押しつぶされ、自殺しようとビルの窓の外にたちます。
 そこにゲイリーが、ババを脅していると勘違いしたバーニーを連れてきます。
 しかしババを説得しに行ったバーニーの煤に汚れた顔を見てゲイリーは本当の恩人の顔を思い出すのです。
 一方外ではバーニーが救助隊を下がらせ、話を聞かれないのを良いことに息子の学費を負担する事を条件に黙っていてやるからそのままヒーローでいろ! とババを説得します。
 説得に応じたババが記者会見をしているとき、バーニーが一人でぼんやりとババが映っているテレビを見ていた控え室にゲイリーがそっと入って来て、ヒーローは本当はあなたでしょう? と尋ねますがバーニーは「俺がヒーローに見えるか?」と約束を守って口を割りません。
 しかしゲイリーが部屋を出る時一言「助けてくれてありがとう!」と言うと、バーニーは「いいさ!」と答えるのでした。




ビルの壁に張り付いてババを説得するバーニー。

 
 【感想】
 ババはずいぶん存在感があると思ったら「アンディ・ガルシア」だったんですね、どうりで!
 ダスティン・ホフマンの屈折した変な悪党振りがさすがです。
 観ていて本当に腹が立つんですよ!
 自分の些細な都合にこだわって他人のいう事に耳を貸さないし、相手に伝えるべきな一番大事な事を言わないし!
 
 この映画は皆の中にある善と悪について描いていて、ババに「人は誰でもヒーローになれるのです。」とのセリフが有りますし、バーニーの元奥さんも「あの人は大変な時にはバーニーじゃなくなる!」と言います。
 ババはどんどん善人になっていってバーニーでさえ彼の事を認めるようになります。
 普通最後には真実を明かして… となるのですが、この映画は説得の結果嘘をつき通すことにするので、結局は「人は誰でも…」をひっくり返してるんでしょうか。
 最後に息子に真実を明かすシーンがあるのですが、これは無い方が良かったみたい?

 バーニーの元奥さん役のジョーン・キューザックはジョン・キューザック(2012)の実のお姉さんだって。



  2018.11.    ................ 傑作映画館の目次ページへ